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財団活動レポート

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AMAROK特別編

日本の中小企業経営者の皆さまにもお伝えしたい心と体を傷つける
〝燃え尽き症候群〟 の予防策

2018年11月15日に東京で行われたシンポジウムに登壇したトレス氏(左)、尾久裕紀氏(中央)、ロイ・チュリック氏(右)。

フランス本部代表オリビエ・トレス氏からのメッセージ

連載記事「AMAROK日仏調査から探る日本の中小企業経営者の心と体、働き方」では、1〜2月号にて日仏AMAROK主要メンバーが登壇したシンポジウムの内容をお伝えしました。シンポジウム終了後、フランス本部代表のトレス氏が残した大切なメッセージをご紹介します。

日本に滞在した数日で日本人は「燃え尽き症候群」のリスクが高いと改めて感じた

2018年11月の「中小企業経営者の健康マネジメント〜日仏共同研究より〜シンポジウム」(主催:日本経済新聞社、共催:あんしん財団)で日本を訪れたオリビエ・トレス氏。日仏の中小企業経営者の健康について調査結果を発表しました。終了後、「AMAROKJAPAN、あんしん財団とその会員の皆さまのご協力で、素晴らしい成果が得られました。このような発表の場をいただき、多くの方にご来場いただいたことに感謝申し上げます」と、お礼の言葉を述べました。その一方で、「日本は文化的に、燃え尽き症候群のリスクを多く抱えています。シンポジウムでも触れたとおり、中小企業経営者ももっと関心を持つべき」だといいます。燃え尽き症候群とは、それまで精力的に仕事をしていた人が、“燃え尽きた”ように意欲を失ってしまった状態です。頭痛や胃腸の不調など、身体的症状があらわれることもあります。多くの人と関わりながら、責任が大きい仕事をする人に多いとされています。日本では、教育・医療・介護従事者について語られることが多いのですが、フランスの研究からトレス氏は、中小企業経営者にもその可能性があると指摘します。中小企業には経営者に代わる人材がいないことも多く、経営者が燃え尽き症候群になれば、会社に多大な影響が及ぼされます。

AMAROK(中小企業経営者健康問題支援機構)とは

フランスに本部を置く、中小企業経営者と個人事業主の健康・メンタルヘルスに関する研究を行う調査機関。2016年から、日本支部であるAMAROKJAPANとあんしん財団との共同調査「AMAROK経営者健康あんしんアクションプロジェクト」を開始し、日仏間の国際比較も行っている。


創設者 オリビエ・トレス氏

創設者 オリビエ・トレス氏
モンペリエ大学経営学部教授。「クリスマスイブに2人の中小企業経営者が経営難のために自殺した」という新聞記事に衝撃を受け、AMAROKを設立。調査・研究の結果から経営改善の提案をするため、講演活動などにも積極的。

日本人の中の経営者像も燃え尽き症候群の大きな要因

この状態に陥る主な要因は、過剰労働によるストレスです。日本は世界的に労働時間が長いことで知られています。今回の日仏調査でも、日本の中小企業経営者はフランスよりもはるかに長時間働いていることがわかりました。さらに、男性中心の社会である日本には「経営者は優秀なリーダーであるべき」という意識が根付いています。「どんなに忙しくても、弱音を吐いてはいけない」と考える人が多いようです。それが自らを追い詰めてしまうことになり、燃え尽き症候群の危険性を高めてしまいます(図1)。このように、日本の中小企業経営者は、労働環境と文化の二つの側面からリスクにさらされているのです。

図1 日本とフランスにおける、燃え尽き症候群の要因(一部)
図1 日本とフランスにおける、燃え尽き症候群の要因(一部)

自分が燃え尽きていないかチェックする方法を知ろう

リスクが多い環境であっても予防は可能です。まずは、現在の自分の状態を知りましょう。下記表1を使って、自己判定することができます。1〜10の項目に、「まったくない:1点」〜「しばしばある:5点」〜「常にある:7点」として、感じている頻度に応じて1〜7の点数をつけてください。10項目の合計点数が40点以上であれば、燃え尽き症候群の疑いがあります。また、1(9も自覚あり)・2・の項目のうち、どれか一つでも5点以上であれば、要注意です。

表1 燃え尽き症候群判定ツール
1.疲労を感じる 2.一部の人たちによって、失望させられていると感じる
3.絶望感を感じる 4.立ち往生していると感じる
5.無力感を感じる 6.落ち込みを感じる
7.肉体的に弱い、または病んでいると感じる 8.自分を「落ちこぼれ」で無価値だと感じる
9.睡眠に問題がある 10.「もうたくさんだ」と口に出す
10項目を1~7点で評価。
合計40点以上で赤信号。

パインスによる燃え尽き症候群の評価:燃え尽き症候群判定短縮版 (M.ローレル、N.ゲゲン、F.ムーダ 2007年)

いまこそ自分、そして会社を守るマイルールをつくる時

上記のチェックで40点以上になった人はもちろん、そうでない人も、常にストレスへの対処を心がけてください。表2は、これまでの研究でわかった、体と同時にメンタルヘルスを良好に保つための大切な8つのルールです。燃え尽き症候群だけでなく、ほかのストレス性疾患の予防にもつながります。これを参考に、自分なりのルールを考えてみてもいいかもしれません。健康な経営を実現するために、まずは自分の心と体を大切にしてください。

表2 健康づくりの8つのルール

1.状況の改善に積極的に取り組む

常に受け身でいると、制約が増してしまいます。自分で運命を切り開きましょう。

2.ポジティブでいる

たとえトラブルがあっても前向きに考えることで、健康にもよい影響があります。

3.自身の有用性を認識する

「自分は役立たず」だと考えると、精神的に疲れてしまい、倦怠感が生まれてしまいます。

4.自分で意思決定する

プロセスに従うだけではいけません。誰にでも、自由に行動する権利があります。

5.しっかりと打ち込む

何かをするとき、中途半端に関わるのではなく、しっかりと打ち込むほうが充実し、健康によい影響が。

6.他人の援助を受けられるようにする

友人のネットワークを積極的につくりましょう。困難な局面を乗り越える助けになります。

7.自分も他人も愛する

自尊心だけでなく、分かち合う気持ちも大切です。そのほうが健康的でいられます

8.大志を抱く

大きな夢や目標を持つことは心の支えになります。決して「叶わぬ夢」 だと思わないように。

取材協力

AMAROK JAPAN 事務局長 亀井 克之氏

AMAROK JAPAN
事務局長 亀井 克之氏

関西大学社会安全学部教授。11月に行われたシンポジウムではモデレーターを務めた。