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若い世代も暑さに警戒を!増加傾向にある職場での熱中症

【全】緊急時メッセージ
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〔広報誌2020年6月号掲載〕

 毎年夏が近づくと、熱中症に関してさまざまな注意喚起がなされていますが、それでも、職場での熱中症は増加傾向にあります。 しかし、熱中症は、適切な対策をとれば予防できるもの。夏本番を迎える前に、職場環境の整備やスケジュール設定の工夫などについて考えてみましょう。

幅広い年代で熱中症による死亡事故が発生!企業の大きなリスクに

2018年、職場における熱中症による死傷者数は1,000人以上と、直近の10年で最多となりました。これは、記録的な猛暑だったことも一因ではありますが、以前から増加傾向にあることがわかっています( 図1 )。

 一般的に、高齢者や乳幼児など、環境への適応力が弱い人ほど熱中症のリスクが高いとされていますが、職場においてはその限りではありません。労働災害における熱中症による死亡者数が最も多いのは50代、次いで30・40代と、業務の主力となる働き盛り世代なのです( 図2 )。中には、体力がある10・20代でも、死亡事故に発展したケースがあります( 事例1・2 )。暑熱環境では、熱中症は年齢にかかわらず、誰もが気を付けるべきリスクだといえるでしょう。

 また、労働基準法において、「暑熱な場所における業務による熱中症」は業務上疾病の範囲に含まれています。職場の環境や上長の指示による業務と、熱中症との因果関係が認められ、従業員の安全配慮義務違反となれば、企業は賠償責任を負う可能性もあります。つまり、熱中症は企業にとっても大きなリスクなのです。

 地球温暖化がますます進行していく現代において、従業員の安全を守り、健全で健康的な経営を続けていくためには、職場の熱中症対策は急務といえるでしょう。

         

20代以下でも、熱中症による死亡事故が報告されています 

事例1:
8時30分頃から駐車場工事にあたっていた従業員(10代)が、17時30分頃に転倒し、舌がもつれて意識を消失。病院に搬送後、およそ1ヵ月半後に死亡。
 
事例2:
住宅工事現場で働く従業員(20代)が、体調不良を訴えた後に急に走り出し、100メートルほど先で転倒。そのまま意識消失し、4日後に死亡。当日の気温は27.5度だった。
※図および死亡事故例は厚生労働省労働基準局の資料より抜粋


めまいから意識障害までさまざまな熱中症の症状

熱中症の重症度は、症状に応じて3段階に分かれています(下図)。重症になるほど、臓器へのダメージも大きくなるため、治療の長期化や、後遺症を招くことがあります。
Ⅰ度の「熱失神」や「熱けいれん」の時点で、日陰での休憩や水分補給をさせることが大切です。症状が回復しないようなら、医療機関へ相談しましょう。


すぐに取り組みたい職場での熱中症対策 3 つのポイント

1.作業環境の見直し

通風・冷房・除湿機の設置で、温度や湿度を下げる工夫を。屋外には屋根付きの休憩所を設置しましょう。

2.作業内容の調整

暑さへの順化(慣れ)を意識したスケジュール設定を心がけ、気温や湿度が高い場合は作業時間の短縮も検討しましょう。作業中は透湿・通気性のよい服装と帽子の着用を推進し、作業前後も含めて、水分と塩分の摂取は定期的に。

3.健康状態の把握

十分に眠れたか、朝食を食べたか、二日酔いでないかなど、従業員の健康状態を把握。また、肥満や糖尿病の人は熱中症のリスクが高いので、健康診断の結果もチェックしておきましょう。

熱中症は予防できるもの。
管理者も従業員も、熱中症の正しい知識を学んで、職場の全員で対策しましょう!


監修:堀江正知氏

産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学研究室 教授。
【資格】修士(公衆衛生学)、博士(医学)、日本内科学会認定内科医、日本産業衛生学会専門医・指導医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)。

集団のペースに合わせる作業は熱中症のリスク!

 暑さを我慢して無理をする人に熱中症が発生します。体調を正直に申告できるような雰囲気づくりが大切です。
何も訴えずに倒れる人もいるので、周囲から声をかけ、応答が普段と違っていたら、日陰で休ませましょう。
また、暑さの我慢は作業ミスや事故の原因にもつながります。風通しのよい日陰になっている場所で、自分のペースで作業ができるように工夫し、作業中も飲料水を摂取しやすくすることに加え、現場の裁量でこまめに休憩がとれるようにしましょう。
 

熱中症はあんしん財団の「ケガの補償(事業総合傷害保険)」の対象外です。