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「健康経営」に取り組んでみませんか?

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「働き方改革」「メンタルヘルス対策」にもつながる社員はイキイキ、業績アップにも結びつく

「健康経営」に取り組んでみませんか?

〔広報誌2019年9月号掲載〕

 中小企業においてメンタルヘルス不調者の発生は、経営に大きな影響を及ぼします。「必要性はわかっても、どんな対策をすべきかわからない」そんな経営者の声に応えるために、産業医科大学とあんしん財団が共同で立ち上げたのが「こころの“あんしん”プロジェクト」です。研究者の一人である森晃爾氏にメンタルヘルス対策につながる「健康経営」についてお話しいただきました。




森 晃爾(もり こうじ)氏

産業医科大学産業生態科学研究所
産業保健経営学研究室 教授
政府の「次世代ヘルスケア産業協議会」委員、同「健康投資ワーキンググループ」主査、経済産業省
「健康経営度調査基準検討委員会」座長
日本産業衛生学会 副理事長



「健康経営」とは?取り組むことで得られるものとは?

 従業員の健康に対して経営者が、「法律上、健康診断だけは提供するが、個人的なものなので会社はかかわるべきではない」というスタンスを持つ企業が多数みられます。そこから大きく踏み出し、「従業員の健康に投資して、健全な労働力によって生産性を向上させ、組織の活性化にもつなげようとする」考え方が、「健康経営」です。「 そんな考え方があるのか」とハッとした方もいれば、「健康経営は大企業のもの」だと思っている方もいるでしょう。むしろ健康経営は、従業員一人ひとりが大切な中小企業だからこそ取り組むべきものであり、取組みによる成果も上がりやすいものです。
 健康経営が会社に何をもたらすか、考えてみましょう。従業員は、会社にとって貴重な戦力です。少子高齢化が進む日本では、若い労働力は簡単に確保できませんし、技術を持つ従業員には少しでも長く働いてほしいと、経営者は思っているはず。そのための土台が健康であり、それを実現するのが健康経営なのです。
 健康の課題は高齢化にともなう問題だけではありません。食生活が乱れ、十分な睡眠もとれず、運動不足が続くような状態では、活力は生まれません。心の病気にもなりやすくなります。
 健康経営の取組みで、イキイキとした生活を営む支援を行えば、従業員の活力は向上します。そして、「個人的なもの」であった従業員の健康に経営者が気遣い、同僚との会話でも健康が話題になることは、コミュニケーションの向上にもつながり、チームでいい仕事をする基盤にもなります。そのような会社では、多くの人が長く働きたいと思い、就職希望者も増えているのです。



何から始めたらいいのか?健康経営の一歩、二歩、三歩

 健康経営で大切なことは、まず経営者が、従業員の健康を思いやる気持ちを表すことです。これは、朝礼での挨拶でもいいですし、健康宣言を出してもいいでしょう。そのような気持ちを表現すれば、当然、実行に移さなければなりません。
 職場の健康づくりには、2つのアプローチがあります。
 まずは、病気のリスクが高い人に対するアプローチです。日本では法律で従業員全員が健康診断を受診することになっています。しかし、結果の活用は十分ではなく、治療が必要といわれても本人が放置していたり、血圧が高いままストレスの高い仕事をしていたりします。健康診断の結果、表に書かれた指導事項のうち、要医療や要精密検査といった医療機関への受診を促す結果がある場合には、指示に従って受診するように勧めてください。
 次に、従業員全員へのアプローチを考えます。大企業では、データ分析をして、出てきた課題をもとに対策を立てます。しかし中小企業では、「食生活が不規則だ」「運動不足の人が多い」「腰痛持ちが多い」といった、もっと直接的に見聞きした情報に基づいて、取り組むべき課題を決めることがいいのではないでしょうか。そして、「ヘルシー弁当に補助を出す」「スマホアプリを使ってウォーキングラリーをする」など、どんなことでもいいので、できるだけ多くの人が参加でき、経営者の思いやりを従業員が実感できるようなことを行ってください。
 最後に、健康づくりには、生活リズムが大切です。長時間労働があっては、健康的な生活を営む余裕はなくなるので、「働き方改革」を忘れずに実践しましょう!

※「健康経営」は、NPO 法人健康経営研究会の登録商標です。



中小企業の健康経営を支援する制度

 健康管理の専門家がいない中小企業の場合、協会けんぽや地域産業保健センターなどに相談して、アドバイスをもらってはいかがでしょうか。また、東京商工会議所が健康経営アドバイザーの養成研修を行っていますので、職場の健康担当者を任命して、少し勉強してもらってもいいでしょう。
 取組みについて目標を持ち、成果を社会に認知してもらうために、経済産業省と日本健康会議が取り組む「健康経営優良法人」認定や自治体の表彰を目指してみてもいいでしょう。
 そのほか、地方銀行などの金融機関が、健康経営に取り組む企業に対して、各種優遇制度を提供しています。


東京商工会議所では、健康経営の必要性を社内に伝え、きっかけをつくる人材「健康経営アドバイザー」を育成する、研修プログラムを実施中です。

経済産業省が発表する「健康経営優良法人」認定は、2019年で3回目。中小規模法人部門で、2,502もの法人が認定されています。




あんしん財団の活動NEWS
森晃爾氏による
「中小企業のための健康経営ゼミナール」を掲載!
計6回シリーズ・総文字数約1万2,000字、「有益な情報がたくさん!」と好評です。

あんしん財団ホームページ内の「こころの“あんしん”プロジェクト」WEBサイトをご活用ください!

「こころの“あんしん”プロジェクト」はこちら


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