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中小企業のメンタルヘルス対策シンポジウムを実施

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あんしん財団「こころの“あんしん”プロジェクト」

中小企業のメンタルヘルス対策シンポジウムを実施しました

〔広報誌2019年5月号掲載〕



働く人のメンタルヘルスに関する問題は、いまや個人の問題ではありません。
企業が「経営課題」の一つとして、積極的に対策に取り組むことが求められています。
そんな中小企業を応援するため、2月にメンタルヘルス対策シンポジウム「中小企業のメンタルヘルス対策を経営課題の視点で考える」を実施しました。


2019年2/15開催
「こころの“あんしん”プロジェクト」メンタルヘルス対策シンポジウム●東京都

中小企業のメンタルヘルス対策を経営課題の視点で考える
〜働き方改革から健康経営まで〜


第1部 特別講演
「中小企業で取組む健康経営の意義」
講師:森 晃爾氏(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室 教授)

第2部 基調講演
「社員を大切にする元気な組織の作り方〜中小企業の“経営革新”はどこから生まれるのか?〜」
講師:小島 俊一氏(元気ファクトリー株式会社 代表取締役)
「すぐできる! 働き方改革関連法への対応と健康経営」
講師:洞澤 研氏(社会保険労務士法人 人事総務パートナーズ 代表、社会保険労務士)
「中小企業における無理のない健康経営の取り組み」
講師:森本 英樹氏(森本産業医事務所 代表、医師、医学博士、社会保険労務士)

第3部 シンポジウム
「健康経営を事業成果といかに結びつけるか」
コーディネーター:柴田 喜幸氏(産業医科大学 産業医実務研修センター 准教授)
パネリスト:森 晃爾氏/小島 俊一氏/洞澤 研氏/森本 英樹氏


第1部 特別講演

「中小企業で取組む健康経営の意義」




講師・第3部パネリスト
森 晃爾氏
産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室 教授


 森氏は、メンタルヘルス対策を「経営課題」として捉え、中小企業がまず取り組むべき健康管理施策について語ります。
 「企業の健康管理の事例は大企業を想定したものが多いですが、中小企業ではできることが異なります。定期健診やストレスチェックなど既存のプログラムを生かしつつ、社員参加型の取組みを考えていきましょう」
 そのために必要なのは、専門家に方法を聞くだけではなく、「社員みんなでアイデアを出し合う」ことだと森氏はいいます。
 また、メンタルヘルスの状態としては最も多い「プレゼンティーズム(職務遂行能力の低下)」を発生させている原因は何かを考えてみましょう。
 「これにより職場のコミュニケーションが向上したり、従業員の定着率が上がる付随効果も期待できます。結果的に業績にも貢献するでしょう」
 健康経営の推進・持続には、中小企業ならではの方法が必要なのです。

社員の健康を経営の基盤と位置付けられるか。「人材=人財」と見る考え方に、共感する人も多数。









第2部 基調講演

小島 俊一氏/洞澤 研氏/森本 英樹氏





 第2部では、3名の講師がそれぞれの立場、経験から講演を行いました。
 元気ファクトリー株式会社代表取締役の小島俊一氏は、愛媛県松山市の「明屋書店」の経営再建を目指したエピソードをもとに、社員を元気にする組織づくりについて語ります。
 「明屋書店では、がん患者の就労について積極的に取り組みました。ある従業員を大切にすることは、全従業員にも伝わるんです。従業員を元気にすれば、その家族も、お客様も、地域も元気になります。そのために経営者は、まず自分を満たすことが必須です」
 2019年から順次施行が予定されている働き方改革関連法への対応について解説してくれたのは、社会保険労務士法人人事総務パートナーズの洞澤研氏。
 「法律が変わるときが健康経営実践のチャンスです。助成金や無料のツールなどを活用しながら、お金をかけずに実践できる方法もあります」
 そんな企業の健康経営施策に長年取り組んできたのが森本産業医事務所代表の森本英樹氏。実際の相談事例などを用いて説明してくれました。
 「法律を守っていきたいけれど、現実は厳しいという企業は多い。社長にいわれて認証の取得だけ、形だけでゴール、とならないように注意を」
 言葉にとらわれず、人を大事にする取組みが今後も求められそうです。




第3部 シンポジウム

「健康経営を事業成果といかに結びつけるか」






 第3部として行われたシンポジウムは、参加者からの質問にパネリストが回答するという形式。第1部講師の森氏と、第2部の3講師がパネリストを務めました。
 最初の質問は「経営者が協力的でない場合、どうすればいいでしょうか?」というもの。パネリストからは「すぐには難しい、タイミングをうかがいましょう」という回答が多くあがりました。
 「いまのポジションでできることをやる。あなたの部署で成果を出せば、会社が動く可能性があります」(小島氏)
 「社員が辞めた、メンタル不調の休職者が出たなどのタイミングで提案してみると効果的でしょう」(洞澤氏)
 次は「メンタルヘルスでの休職後、復職したがもとのパフォーマンスが出ない社員への対応」です。
 「どこまでできるなら復職できるか、会社としても明確にすることが大切」(森本氏)
 「その人がどれだけ準備できているか、会社も休職中放置してはダメ」(森氏)
 働き方の多様化の中で、メンタルヘルスに限らず、がんや妊娠による休職・復職は多く起こりうることです。アスリートのように常にトップパフォーマンスが出せないことも想定した企業経営が求められるのかもしれません。
 そのほかメンタルヘルス対策に必要な要素、ストレスチェックの偽装対策など、中小企業ならではの身近な問題について有益な議論が行われました。