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働きやすい会社にするための就業規則

【全】緊急時メッセージ
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〔広報誌2021年12月号掲載〕

中小企業における安全配慮義務②
働きやすい会社にするための就業規則

中小企業における経営者と労働者間のトラブルは増加傾向にあり、その原因として、経営者が労働者を雇用する際にきちんと労働条件を明示していないことや、就業規則を作成していないといったケースが挙げられます。今回はこのようなトラブルを未然に防止し、よりよい労働環境にするための就業規則のつくり方について、社会保険労務士の脊尾大雅氏に伺いました。





監修:脊尾大雅氏

秋葉原社会保険労務士法人代表。社会保険労務士、精神保健福祉士。企業のメンタルヘルスやコミュニケーションの観点からの労務管理、職場環境改善に向けた就業規則作成や研修を行う。





就業規則作成のポイント

就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者は必ず作成し、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。記載事項と内容はその企業の業種、業態、労働管理方針などによって、それぞれ個性的であるべきですが、労働基準法(以下、労基法)では、就業規則に記載すべき事項について下記表のように定めています。
就業規則は、会社のルールブックとしての機能と、業務マニュアルとしての機能を果たしており、経営者と従業員が安心して働くための基盤となるものです。企業の規模にかかわらず、作成しておくことが重要だといえるでしょう。導入や改定にあたっては、厚生労働省ホームページ「モデル就業規則規定例」を参考に、企業の実情に合わせて調整すれば、専門家に頼らずとも企業内で作成することができます。また、労基法に即していればその企業独自の事項も記載できます。



就業規則に記載する事項

1. 絶対的必要記載事項 (必ず就業規則に記載しなければならない事項)
①始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
②賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期並びに昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇の事由を含む)
2. 相対的必要記載事項 (定めをする場合に記載しなければならない事項)
①退職手当に関する事項
②臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③食費、作業用品などの負担に関する事項
④安全衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰、制裁に関する事項
⑧その他全労働者に適用される事項



脊尾氏に聞く「就業規則作成Q&A」

Q1
社長が一人でつくってもよいのでしょうか?

A1
就業規則は社長が一人で作成しても問題ありません。労働者代表の意見聴取で反対意見が出ても規則の適用は可能ですが、意見を聞いたうえで内容を変えたり、次年度以降の参考にしたりする場合もあります。

Q2
福利厚生は手厚くしたほうが求人に有利?

A2
福利厚生はいったん手厚くすると容易に下げることはできません。会社の持続性を考え、まずは法律どおりの基準で作成することをおすすめします。

Q3
記載の表現でポイントはありますか?

A3
就業規則には業務マニュアルとしての機能があるので、ルールの運用の手順はできるだけ具体的に記載しましょう。規則の理由、適用範囲、例外なども、わかりやすく丁寧に記載してください。最近は労働者に向けて語りかけるような「ですます」体を用いた就業規則も増えています。

Q4
見直しはどのくらいの期間で行うのがよいですか?

A4
就業規則は固定化したものではなく、法律の改正や社会の変化に合わせて変えていく必要があります。内容の再確認という意味合いも含め、年に一度は見直しをすることをおすすめします。最近ではハラスメントの防止、育児休暇の規定、ジェンダーをめぐる表記などを見直し、改定する企業も多く見られます。


従業員とともにつくる「労使最適型」就業規則とは

一般的に就業規則は経営陣や人事担当者が作成し、労働者側の意見聴取を経て、社内通知するのが通例です。 しかし、企業に多様性の尊重や社会的価値の提供が求められる時代において、就業規則も多様性や自由度を高める必要が出てきています。そこで脊尾氏が提案するのが、経営者と従業員がともにつくる「労使最適型」就業規則です。




就業規則を労使対話のツールに


脊尾氏が提案する「労使最適型」就業規則とは、作成プロセスにおいて経営者と従業員が対話をし、双方の考え・思いを理解したうえで作成する就業規則のこと。労使最適型にすることで下記表のような効果が期待できると脊尾氏は話します。「具体的には、『ルールブック』と『業務マニュアル』の機能に、経営者と従業員それぞれの思いやメッセージを加えることで、納得感のある就業規則になります。さらに従業員の会社への理解や満足度、働く意欲も高まるでしょう」(脊尾氏)。






労使最適型を取り入れる効果

POINT 1 経営者、従業員双方が納得し尊重しあえる就業規則になります
POINT 2 作成プロセスが労使対話のきっかけになり、従業員が働き方を真剣に考えるようになります
POINT 3 従業員同士がお互いを尊重しあい、自分本位な考え方になりづらくなります

「労使最適型」就業規則の一例

勤務時間中は、職務に専念し、(中略)私用電話及びメールや業務に関係のないインターネットの閲覧等(中略)しないこと。少しの使用すらもダメだと言っているわけではありません。しかし「ちょっと多いな」とか「不適切だな」と周囲の人が感じたら、指摘があると思います。
※秋葉原社会保険労務士法人の就業規則より抜粋(下線部分が労使の対話を反映)。



〈取組み事例のご紹介〉 多様性を大切にする社風を就業規則に反映

平安伸銅工業株式会社(大阪府大阪市)
業種・事業内容:収納用品の開発・製造 「突っ張り棒」「突っ張り棚」が主力商品
従業員数:65名(契約社員・嘱託社員12名含む)




代表取締役
竹内香予子氏

取組みのきっかけ

創業70年の同社の理念は「アイデアと技術で『私らしい暮らし』を世界へ」というもの。3代目社長の竹内氏は、従業員自身も「私らしい暮らし」を探求すべきで、会社のルールづくりにもかかわるべきだと考えた。そこで従業員に呼びかけたところ7名の従業員が手を挙げ、就業規則改定プロジェクトがスタート。課題を抽出し、ルールに落とし込むまで8ヵ月かかった。

改定内容

年齢、性別、国籍など従業員が多様なバックグラウンドを持つ同社は、従業員同士の違いを組織の強みに変えることを目指している。多様性を大切にする社風を反映し、就業規則における課題を抽出する過程で、ジェンダーにかかわる表現が焦点となった。性別を限定する表現はすべて書き換え、性別を問わず事実婚を婚姻関係として認め、慶弔見舞金規定も改定した。

改定された就業規則の一例
第45条(特別休暇)
社員が次に該当するときは、特別休暇を与える。
  1.本人の結婚 5日
  2.パートナーの出産 2日
  3.父母、パートナー、子の死亡 3日(喪主である場合 5日)
  4.兄弟姉妹、祖父母、パートナーの父母、同居の義祖父母の死亡 2日
(中略)
5 当社における結婚の定義は下記とする。
  1.法律婚
  2.事実婚(性別不問)
   なお、事実婚の場合のみ社員またはパートナーのいずれかが未成年の場合は、未成年者1名につき保護者1名の同意を必要とする。

※平安伸銅工業株式会社の就業規則より抜粋(下線部分を改定)。

社内の変化、効果

従業員から「今後はこうした点も変えていきたい」など働き方について意見や提案が積極的に上がってくるようになり、「会社のルールは働く人自身がつくる」という意識が生まれてきた。



リモートでのミーティングでも意見が活発に交換される。





 

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〜基本や原則と労使最適のための作成プロセス〜

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■講師/秋葉原社会保険労務士法人 代表 脊尾大雅氏
■配信期間/2022年3月31日(木)まで ※期間中は何度でも視聴可能
■視聴時間/約60分

※視聴には会員番号が必要です。会員番号は「会員証兼保険証券」または「会員証兼保険契約更新証」でご確認ください。