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社員・顧客・社会から選ばれ続ける会社とは

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労働安全衛生講演会を開催しました

全経営者が考えるべき「会社が幸せにすべき人」
社員・顧客・社会から選ばれ続ける会社とは

〔広報誌2020年2月号掲載〕

「働き方改革」「人材確保」は、企業の大小にかかわらず、経営者にとって避けられない課題です。過去にとらわれず、どのように現代社会と適応した施策を行えばいいのか。そのヒントやアイデアを共有するべく、2019年11月14日に、東京・田町で労働安全衛生講演会を開催しました。




「五方良し」経営を行えば良い結果が必ず付いて来る

 本講演会前半では、『社員・顧客・社会から選ばれ続ける会社とは』と題し、坂本氏が考える理想的な企業経営のあり方について語りました。
 坂本氏は「企業経営におけるすべての活動には、目的・手段・結果の3つがあり、最も大切なことは目的である」と述べ、「企業が掲げる目的とは、『関係する人々の幸せの追求・実現』でなければならない」と説明します。
 経営に悩む企業の多くは、目的よりも手段や結果に重要度が置かれてしまっているケースが多く、優先順位を見直さなければ、経営を正しい方向に持って行くことはできません。
 「業績や利益や企業ランキングなどは、あくまでも手段であり、目的になってはいけません。逆にいえば、正しい目的を持って経営を実践しさえすれば、結果は必ず付いて来るのです」
 過去多くの企業経営の実態を見聞した坂本氏は、この理論が覆った事例は存在しないと胸を張って語ります。
 では、企業が掲げるべき目的である『関係する人々の幸せの追求・実現』とは、具体的にどんなものなのでしょうか。それは「“五方良し”を実践することである」と坂本氏はいいます。
 五方良しとは、近江商人の時代より伝わる「三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)」を進化させた、坂本氏独自の考え方。企業経営における「幸せにすべき5人(上記図参照)」を定め、これら5人が誰一人として犠牲になることのない経営をしなければならないとするものです。
 その中でも特に経営者にとって大切にすべきなのは『社員とその家族』であるとも、坂本氏は断言します。経営者自身がこの“ 社員第一主義”を貫くことができれば、今度は社員が顧客や仲間を大切にすることができ、その結果として社会がより豊かになり、経営のよいサイクルができ上がっていくのです。

働きたいシルバー世代が会社の成長を支える

 講演会後半では、『日本一の高齢者雇用企業の働き方改革~職場における高齢者と若手のベストミックス~』と題し、社員第一主義を実践している、(株)加藤製作所の加藤氏が登壇。
 2001年より60歳以上の世代を積極的に雇用。当時は工場の土日祝日稼働を目指した取組みでしたが、その後も積極的な雇用を続け、現在では従業員114名中57名が60歳以上。高齢者の雇用を創出し続けています。
 「シルバー世代の方々に仕事を通した生きがいと収入を提供しつつ、工場全体の稼働率も上がり、お客さまにもご満足いただける、まさに一石三鳥の取り組みです」と話す加藤氏。経営者として社員を幸せにすることで、顧客の満足度向上や地域活性化にもつながるという坂本氏の理論を具現化した例といえるでしょう。
 老舗企業でありながら、持ち前の技術力と社員力を武器に、現在も成長を続ける同社。企業の大小にかかわらず、正しい目標に向かうことで、選ばれ続ける企業となりえるのです。






経営学者 元法政大学大学院教授
人を大切にする経営学会 会長
坂本 光司氏

 1947年静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。




株式会社加藤製作所
代表取締役社長
加藤 景司氏

 1961年岐阜県生まれ。1888年(明治21)、現在の中津川市に鍛冶屋「かじ幸」として創業した、プレス板金部品の総合加工メーカー(株)加藤製作所の4代目。2002年に全国高齢者雇用開発コンテストにて「厚生労働大臣賞最優秀賞」を受賞。著書に『意欲のある人、求めます。ただし60歳以上』(PHP研究所)。




坂本氏が考える「幸せにすべき5人」とは?

「1. 社員とその家族」「2. 社外社員(仕入先や協力会社)とその家族」「3. 現在顧客と未来顧客」「4. 地域住民、とりわけ障がい者等社会的弱者」「5.出資者・支援機関」のことを指し、これらが誰一人として犠牲になることのない経営をしなければならないとするものが、坂本氏の考える“五方良し”です。


 「エイジレスファミリーカンパニー」加藤製作所が実現した高齢者雇用


 2001年、『意欲のある方求めます!男女問わず!ただし年齢制限あり。60歳以上の方』と募集チラシに記し、シルバー人材専用の採用活動をスタート。大きな反響があり、土日祝日をシルバー世代の就労日とし、工場の1年365日稼働を実現した(現在は主に平日勤務)。