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日本の中小企業経営者の心と体、働き方vol.11

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AMAROK 日仏調査結果から探る

日本の中小企業経営者の心と体、働き方vol.11


日本の女性経営者にインタビュー心と体の守り方、健康的な企業経営とは?

コンサルタントとして多くの経営者とかかわり、自身も企業経営をされている、株式会社アール・エム・アイの田邉朋子氏。以前、ご登壇いただいたAMAROK主要メンバーによるシンポジウムの内容をふまえ、健康的な経営のあり方、男女の違いについて考えます。
 

⽥邉 朋⼦氏(写真左)
2005年に株式会社アール・エム・アイにコンサルタントとして登録、2010年に代表取締役・研究所長に就任。環境や品質管理の国際規格(ISO)の認証取得などの支援を行う。

亀井 克之氏(写真右)
AMAROK JAPAN 事務局長、関西大学社会安全学部教授。日本リスクマネジメント学会副理事長など兼務。経営学をベースとしたリスクマネジメントを専門とする。
 






AMAROK シンポジウムでの田邉氏

2018年11月に行われた「中小企業経営者の健康マネジメント〜日仏共同研究より〜シンポジウム」(主催:日本経済新聞社、共催:あんしん財団)に登壇した田邉氏(右)。








“女性経営者として働く”ということ


『亀井』
 以前、AMAROK のシンポジウムにご登壇いただいた田邉さんとともに、経営者の健康について考えてみたいと思います。お知り合いの経営者の皆さんは、自身の健康についてどのくらい意識しているでしょうか。

『田邉』
 「元気だ」といいながらも、疲れた顔で無理をしている経営者が多いです。それに加えて、忙しさを理由に「休みはいらない」とおっしゃる。私も3 時間しか睡眠を取らない時期がありましたが、忙しすぎて脳が活性化しているからか、精神的に充実していました。

『亀井』
 じつは、AMAROK 日仏調査の健康に関する項目で、男女に差が見られました 『図』 。女性と男性で、会社経営の難しさなど、どのような違いがあるでしょうか?

『田邉』
 仕事の忙しさについては、男女に差はないと思います。ただ、女性経営者が職場で“お母さん化”してしまうことがよくあるようです。業務のことはもちろん、従業員の衣食住も気にかけたりするところが、女性経営者ならではだと思います。

『亀井』
 それでは、家と職場の垣根がなくなってしまい、気が休まらないですね。

『田邉』
 “お母さん化” は、悪いことばかりではなく、裏を返せば、細かなところにも気がまわる、ということでもあると思います。従業員をケアしながら、男性とは違った視点で、自分なりに前向きな経営をしている方が多いのではないでしょうか。



『図』AMAROK日仏調査の分析結果(一部)「経営者の心と体の健康状態」


日仏ともに、女性経営者の割合が少ないが、日本はそれが顕著。また、肉体的健康と精神的健康についても、両国で男女差が見られる。※複数の調査項目を元に算出。数字が大きいほど良好な状態を示す。



自分自身と会社の健康を守るための工夫


『亀井』
 従業員のケアも大切ですが、経営者自身の健康を守るためには何をしたらいいでしょうか?

『田邉』
 経営者は、比較的自由に時間を使えるので、食事や睡眠は必要な時に取ることができます。だからこそ、仕事ばかりにならないように、意識的に自分のタイムマネジメントをすることが大切です。

『亀井』
 自由度が高い分、健康を意識して時間を使いたいですね。

『田邉』
 そのためには、「自分が満足していること・していないこと」を把握する必要があると思います。以前から、サービス業では「顧客満足度調査」が行われていました。最近では、働き方改革によって「従業員満足度調査」も行われるようになっています。しかし、経営者の満足度は誰も調査してくれません。もし自分でそれを把握できるようになれば、何に時間を使うべきなのかもわかりやすくなるのではないでしょうか。

『亀井』
 ほかに、個人的に意識されていることはありますか?

『田邉』
 日頃から、些細な情報もキャッチできるような感性を磨く努力をしています。例えば、「靴下を履く時に足が上がらない」「食事をした時の味覚の違い」なども、後々の健康に大きくかかわってくるかもしれません。

『亀井』
 リスクマネジメントの世界でも、「リスク感性」という言葉があります。ロジカルな思考だけでなく、感性による瞬発的な意思決定も重要視されているのです。健康な経営をするうえでも、同じことがいえそうですね。




“ 睡眠の自己マネジメント” の一つとして、昼寝の時間も取るようにしているという田邉氏。


田邉氏のオフィスを拝見



執務室はコンパクトながら、ストレスなく業務にあたれるような空間づくりを心がけている。




事業承継のタイミングは突然訪れるかもしれない


『亀井』
 中小企業が抱えている課題の一つに「事業承継の難しさ」が挙げられると思います。私の知る限りでも、経営者が突然健康を損なってしまうなど、急なタイミングでの事業承継を余儀なくされたという例は多いです。3代目経営者という立場の田邉さんから、何かアドバイスをいただけないでしょうか。

『田邉』
 弊社の場合、高齢を理由に、先代が急に退任し、突然私にバトンが渡されました。まったく心構えができておらず、とても戸惑ったのを覚えています。引き継がせる側、引き継ぐ側の双方が「事業承継のタイミングは想定よりも早く訪れる」という可能性を考えておくべきです。

『亀井』
 後継者の育成は早めに行ったほうがいいということですね。

『田邉』
 業務の引き継ぎはもちろんですが、株式の相続などの法律的な手続きもたくさんあります。やらなければならないことは、想像以上に多く、心身に負担がかかります。

『亀井』
 そうした準備をするためにも、経営者は自らの健康維持に努める必要がありますね。




リスクマネジメント学の観点から、田邉氏の話を分析する亀井氏。




Conclusion

普段の生活で、積極的に感性を磨くことが大切

 今回の対談で印象的だったのは、「感性を大切にする」という点です。元々、リスクマネジメント学で「リスク感性」として知られていたことが、現場で活躍されている方から、実感のこもった話として聞けたのは大変興味深いです。
 音楽や映画を楽しんだり、おいしいものを食べたりすることは、大切な気分転換です。しかし、それ以上に「感性を磨く」という意味で、健康な経営を実現するための、重要な要素なのかもしれません。

(亀井克之氏)