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会社を大きくするする事業計画のつくり方

中小企業が立てている事業計画の中には
実効性に乏しいものがあったり、
計画自体がないケースも見受けられる。

そこで、事業計画はなぜ大切なのか、
またその立て方のポイントを検証する。

PART1
使える事業計画をつくる -実践的な事業計画策定のポイント-

事業計画はなぜ大切なのか

数年で大躍進を遂げる会社がある一方で、躍進を願いつつも創業当時と変わらぬ姿の会社もある。その差は、一体どこにあるのだろうか。

「一つは、事業計画を作成しているかどうかです」と語るのは、多くの会社の事業計画作成にかかわってきた原会計事務所所長で税理士の原尚美氏。

事業計画は自分の事業に対する仮説だ。成長している会社は仮説を立て、それが正しいかどうか検証しながら少しずつ進んで行く。間違いがあれば即座に修正を加えるし、その過程で「売れた理由・売れなかった理由」「自社の強み・弱み」などもわかってくる。

それに対して、事業計画を作成せずに経営している会社は、地図を持たずに砂漠の中をさ迷っているようなものだ。行き当たりばったりだから、道に迷っても、迷ったことすら気付かない。商品やサービスが売れても、検証していないから、どうして売れたかわからない。仮に売上げが落ちれば大変だ。売れた理由がわからないため、売れなくなった理由も当然わからない。手のほどこしようがないから「ジ・エンド」の可能性も高い。

会社を拡大するためだけではなく、実は生き残るためにも、事業計画は必要なのである。

事業計画をつくるためのABC

それでは、実際に事業計画をつくるためには、どうすればいいのだろうか。

「まず最初に考えるべきことは、図に示した『コンセプト』『ビジョン』『ドメイン』の三つです」

「コンセプト」は、「こんな風に社会で役立ちたい」「こんな世の中をつくり出したい」という会社の使命で、基本的には会社が存続する限りずっと使い続ける。また、従業員、取引先、金融関係者など、会社に関係する全ての人に共感してもらうためのメッセージでもある。だからコンセプトは、誰でも理解でき、また、普遍的な内容にしなくてはいけない。

といっても、難しく考える必要はない。要は、会社をつくった時の「想い」だ。

例えばカフェの経営者なら、「どこよりもおいしいコーヒーを飲ませたい」「近所の主婦のたまり場を用意したい」などいろいろな理由があっただろう。それを掘り下げれば、「食文化への貢献」「豊かな地域コミュニティを創造」「生活に笑顔の提供」といった普遍的な理由にたどり着く。それがコンセプトだ。もし、そんなことを考えたことがないという人は、以下のような項目から考えてみよう。



  • 数ある仕事の中で、わざわざその仕事を選んだ理由
  • 会社をつくった理由
  • どんな世の中を、つくりたいのか
  • 誰を喜ばせたいのか
  • どうやって喜ばせたいのか
  • 客が自分から買うだろうと思う理由

「コンセプト」が決まったら、次は「ビジョン」の策定。「ビジョン」は、「コンセプト」を実現するための、いわゆる中期目標だ。コンセプトが抽象的だったのに対して、ビジョンは具体的・客観的に設定する。「5年後には、○○円の売上げを上げる」「従業員を○○人にする」「○店舗目を出す」「銀座に出店する」などだ。

ここでは5年後の目標を例に出したが、いまの時代、先を予想するのは難しい上に小規模企業の場合、3年後でも5年後でも、サービスや商品の内容はそれほど変わらない。

「もし、5年先がピンとこないようなら、まずは手をつけやすい1年先の目標を立てることから始めてみましょう」

そして最後の「ドメイン」は、「ビジョン」を達成するための手法だ。山登りに例えれば、頂上が「ビジョン」、そこにいたるためのルートが「ドメイン」ということになる。


  • どんなタイプの客を狙うのか
  • どんな価値を提供できるのか
  • ヒト・モノ・カネのどんな経営資源を持っているのか
  • マーケットの中の自分たちの立ち位置はどこにあるのか
  • 自分たちの強み弱みはどこか
  • 業界、商品、サービス、会社などは、それぞれライフスタイルでいえば、どこの段階にいるのか
  • ライバルは誰か

といったことを検討しながら、具体的に「ビジョン」を実現する方法を決める。例えば、売上げが落ちている美容室なら、ライバルの調査(再認識)から始める必要があるかもしれない。なぜなら、すでに美容室の競合は美容室だけという時代は終わった。客が美容に使えるお金は限られているのに、ネイルサロン、メークアップサロン、エステティックサロンをはじめ、さまざまな美容サロンが増えているからだ。

美容室同士で競争するのと、異業種と競争するのでは、とるべき戦術はまるで違ってくるだろう。このようにドメインを検討すれば、早い段階で的確な戦略を立てられる。

最も難しい売上げ予測

事業計画で最も難しく、また経営センスが問われるのが「ビジョン」の中の売上目標を決めることだ。

「新規のクライアントには、必ず売上げ予測を聞きます。根拠に基づいた予測ができる経営者は、例外なく会社を伸ばしています。逆に、根拠があいまいな経営者はうまくいかないことが多い」

売上げ予測をするためには、どこまで具体的に考えるかがポイントだ。

例えば、BtoBの新規ビジネスの場合。まず、やることはカタログを持参したり、実際に営業して感触がよかった企業名を5社程度書くことだ。書ける企業がなければ、ターゲットが間違っているか、商品やサービスに問題があると考えられる。

また、小売店や飲食店のような不特定多数を相手にする場合は、「商圏人口×1カ月当たりの来店頻度×目標入店率」で計算するのが一般的。商圏人口は各地域の「行政要覧」や、各自治体が独自に調査した「消費購買行動調査」などに出ており、ネットで検索できる。

美容院や飲食店のように席数が決まっている場合は、「席数×客席稼働率×1日当たりの目標回転数×営業日」で計算する。1日当たりの目標回転数を割り出すためには、経済産業省や総務省などのホームページに出ている統計などが役立つ。

商品やサービスについても、複数の商品を扱っていれば異なる価格の商品ごとに予測する。販売チャネルや得意先ごとにも予測すればさらに正確な数値が導き出される。

もっとも、既存のビジネスの場合は、すでに必要な利益、必要な売上げが確定している。多くの企業は借り入れを抱えているので、少なくとも借金を返済できるくらいの額は稼がなければならない。

目標額を達成するために、まず、知るべきは現状。実際にどのくらい売れそうかだ。商品ごと、もしくは担当者ごとにヒヤリングをして具体的な数字を書き出していく。そうした作業をすることによって「客が2割減っている」とか、「新規顧客が増えていない」「ライバルが現れた」など具体的な数値や背景が見えてくる。それがわかって、初めて目標額を達成するために、チラシをまくのか、キャンペーンをするのか、手紙を書くのかといった戦術を立てられる。

事業計画は誰のためにつくるのか

ところで、事業計画は、経営者本人のほか、どんな人たちに見せるものだろうか。

まず、一つは従業員。経営者が従業員に対して「今年の目標は売上げ2割アップしろ」とだけ伝えれば、従業員の反発を招くだけだ。それに対して、事業計画を見せ、「来年は2店舗目を出したいから、みんなでがんばって売上げを2割アップさせよう」と言えば、従業員の積極性も変わってくる。

そして二つ目は金融機関。多くの経営者は、金融機関に提出する事業計画の作成には悩むようだ。というのも、事業計画の入門書に「金融機関向けの事業計画」のつくり方について書かれているものが少なくないからだ。そこには、「売上げは去年の2割アップ」「経費は5%アップ」と書くべきなどと指導しているのが典型。

「確かに机上の空論で書類の上では利益を出せるが、教科書通りに機械的に書き入れた事業計画は無意味です」と原氏。

仮に融資が受けられたとしても、机上の空論でつくった事業計画通りに売上げが上がるはずはない。結果が出ないので、結局、金融機関の信用を失う。

「金融機関向けの事業計画は、フォーマットが決まっている場合が多いのですが、理想を言えば、経営者用、従業員用、金融機関用、全ての事業計画は同じであるべきだと思います」

仮に売上げが思うように伸びなくても、自分で考えてつくった事業計画であれば、見通しの誤り、取引先の事情の変化など売上げが不振だった理由をきちんと説明でき、修正案もすぐ提案できる。

その理由を金融機関が納得すれば、金融機関が持つノウハウやコネクションを使って応援してくれることは珍しくない。変な小細工をするよりは、金融機関を味方につける熱い事業計画の作成をおすすめする。

とはいっても、中小企業の経営者の多くは現場作業もこなして忙しい。事業計画の作成に膨大な時間を割くのは本末転倒だ。まずは、連休やゴールデンウィーク、お盆休みといった休暇に1年先の目標を考える。その程度から始めて十分だ。慣れれば、事業計画を考えること自体が楽しくなるし、業績も上がっていくはずだ。

PART2
融資を可能にする事業計画 金融機関から高評価を得るノウハウ

名刺のコピーで融資がおりやすい?

新規事業の立ち上げや設備増強など、事業拡大には融資を受けることが欠かせない。しかし、現実には、金融機関に断られるケースが多いようだ。

「ただ、あきらめてはいけません。提出書類の書き方一つで、ゼロ査定がくつがえることはよくあります」と話すのは、中小企業の融資サポートを手がける一期行政書士事務所代表の引地修一氏だ。

一般的に、中小企業向け融資と言えば、銀行の信用保証協会付き融資(制度融資)か、日本政策金融公庫のいずれかだろう。

「どちらを利用するにしても、事業計画書を作成すべきですが、私の元に相談に来る経営者の多くは用意すらしていません。融資を受けたいなら、きちんと作成しましょう」

では、どのように事業計画書を作成すればいいのか。

「金融機関も、融資で食べている以上、将来の見込みがあり、お金をきちんと返してくれる企業があれば、お金を貸したいんですね。だから、『本当にこれだけのお金を必要としている』『借りたお金を返すアテがある』ことを納得のいく形で説明すれば、融資してくれます。そのために必要なのが、具体的な収支計画書です」

次ページの表が、その見本だ。期間は2年分。月ごとの収支を項目別に示す。

「重要なのは、できるだけ算出の根拠を示すこと。計画書の下に、具体的な改善計画などを記すことで、説得力が出て、納得してもらえやすくなります」

売上げの根拠の提示は難しいが、いくつか方法があるという。その一つが、名刺のコピーを持参することだ。現在取引のある、また過去にあった取引先の担当者の名刺を、A3用紙にできるだけコピーする。

「たかが名刺と思われるかもしれませんが、見込み客の数や属性がひと目でわかるので、金融機関側も事業の行く末の予測ができる。非常に効果的な手法の一つです」

すでに仕事が発生しているなら、その発注書や契約書を提出するのもよいという。

「それらの用意が難しければ、見積書でも大丈夫です。もちろん架空の書類を作成してはダメ。金融機関はその発注元なども調査しますから、必ずバレるとお考えください」

小売業なら、商圏内の市場調査をして提出するといい。

「調査といっても、細かく調べる必要はありません。近隣エリアの人口や駅の乗降客数、半径50m~1kmの同心円内に競合店があるか。その程度の調査でかまいません。あとは金融機関の方で判断してくれます」

収支計画書には「借入金」の項目を設けて、「希望する額の融資が受けられた」と仮定して、金額を入れておくといい。

「すると、本当にお金が必要なことが理解してもらえます」

引地氏は、借入金とともに「CF(キャッシュフロー)」の項目も設けることをすすめる。CFとは、その月の終わりに、手元にいくら現金が残っているかを表したもの。前月の繰越金と当月の利益、借入金に、計算上は差し引いていた減価償却費を足す。そこから金融機関への返済額を引く。

「なぜ必要かといえば、計画に破綻がないか、自分でチェックできるから。1回でもマイナスになると、資金繰りの破綻を意味します。金融機関は必ず見破りますから、事前に調べておきましょう」

決算書が劇的に好転する奥の手

融資を勝ち取るには、もう一つ、するべきことがある。決算書の内容をよくすることだ。

最大の理由は、銀行の格付けに影響するから。各金融機関は取引のある企業を格付けし、格付けが低い企業には融資を実行しない。この格付けは、決算書の内容で決まるのだ。また決算書と収支計画書の数値がかけ離れていれば、収支計画書の信憑性も低くなる。

「基本的に、決算書の数字をよくするには『資本金を増やす』『利益を増やす』『負債を減らす』のいずれかを地道に行うしかありません。ただ、いくつかの特効薬はあります」

その一つが、経営者が会社に貸し付けている資金があるなら、それを資本金に振り替えることだ。「会社にとって負債だったものが、そのまま資本に変わるわけですからね。財務内容が劇的に変わります。実際、私のクライアントが、この手を使って債務超過状態から脱し、政策金融公庫から満額、保証協会からも多少の減額で、融資を受けられました」

そのクライアントは、未払いになっていた役員報酬の放棄も行った。

「いずれも、自腹を切ることになるので、二の足を踏むかもしれません。しかし、融資を受けたいなら、しない手はない。長い目で見た決断が必要です」

そのほかにも「もはや回収不能と思われる売掛金を処理する」「不要な在庫を処分する」など、決算書の数字をよくする方法はいろいろと考えられる。こうした経営努力をすることを示した「経営改善計画」を作成し、金融機関に提出すると、高く評価されるという。

「その時には、この改善計画でよいのかを金融機関に確認してもらい、アドバイスをもらって修正をします。提出して終わりではなく、3カ月に1回程度、状況を報告しましょう。経費削減や人員削減など身を切ることを約束せざるを得ない部分もありますが、金融機関からは信用が得られます。特に信用金庫や信用組合はこの種の取り組みを理解してくれます」

引地氏は、すぐにお金を借りる予定がなくても、付き合いのある金融機関に対して、決算時に経営改善計画を提出することをすすめる。いざという時、融資が受けやすくなるそうだ。

融資を受ける上で押さえるポイントは、ほかにもある。見落としがちなのは「減価償却」。

「税法上は毎年する必要はなく、したりしなかったりする企業が多いのですが、毎年行わないと銀行の評価が下がります。融資にも影響するので注意が必要です」

政策金融公庫に融資を申し込むなら、家賃や税金などを遅れずに払い続けることも大切だ。

「政策金融公庫は通帳主義で、通帳を事細かくチェックします。そして、公共料金などの支払いが一つでも遅れていたら、その時点で融資NGとなる可能性が高い。融資の返済も滞るのではないかと疑われるんです。いまからでも気をつけましょう」

以上の点に留意すれば、融資を受けられる可能性は高まる。