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やる気が生み出す「地産地商」

地域で生産した農作物などをその地域で消費することで、
地域経済の活性化や省エネルギーなどを図る「地産地消」。
今回はこの「地産地消」を、「地産地“商”」ととらえ、
地元消費にこだわらず、地元の産物を使ったビジネスを
拡げている地方企業を取り上げた。

PART1
身近に埋もれている「人」と「商材」を発掘する-山形県川西町「紅大豆」-

偶然が生んだビジネスの種

あわい“ピンク色”に染まった木綿豆腐。ほのかに“赤い”大粒納豆。自然な“紅色”が目に付くパウンドケーキ─。

山形県東置賜郡川西町。県内2位のコメ生産量と米沢牛の産地として知られるこの町では10年ほど前から“ほんのりとした赤みを帯びた”珍しい大豆の加工食品が数多くつくられている。県内外で隠れた人気だ。

原材料は「紅大豆」。

さや豆の時はほかと変わらないが、完熟期にはぎゅっと表皮が赤色に変わる、川西町周辺でしか育たない希少な在来種だ。普通の大豆に比べると収量が3割は落ちるが、色の美しさと大豆イソフラボンが多く含まれることから注目され、この数年で栽培量が急増。ユニークな特産品の原料として目に付くようになった。

「希少性とオリジナリティ、健康効果もある。紅大豆は特産品として理想的」と言うのは、豆腐製造業・㈱仁藤商店代表の仁藤齊氏。紅大豆を特産品として売り出したキーマンである。

「まったくの偶然から見つけられたんですけどね……」

おばあちゃんの「赤い豆の煮物」で知る

そもそも仁藤氏は山形市で大正時代から続く老舗豆腐店に婿入りした3代目。もっとも、1980~90年代初めには豆腐製造業のかたわら山形大学で大豆サポニン研究の権威として知られた大久保一良教授に師事。豆腐研究をしながら地大豆の商品化に尽力してきた、というユニークな経歴を持つ人物だ。

「地場産業の促進という意味で『安価な大豆で美味しい豆腐をつくりたい……』と研究を続けていたのですが、結論としては『美味しくて安全な豆腐をつくるためには、美味しくて安全な大豆が不可欠』だった。そして、大豆づくりにまで踏み込むようになったんですよ」

当時もいまも国内で流通する大豆の7~8割が輸入大豆で、その安さにはかなわない。また農協などに卸すと形や色の悪いものは等級を下げられ、場合によっては卸せない。これらが足かせになり、安全性と品質の高い国産大豆の生産者が極めて少なかった。

そこで直接近隣の農家に『形や色で選別せず一括同額で仕入れ、豆腐に加工する』と働きかけ、直接購入する仕組みをつくった。「豆腐にするには大豆の形は関係ないですから。農家としても生産リスクが大幅に減りますよね」。

実際、提案するとすぐ多くの農家が大豆を仁藤商店に直接売るように。90年代から盛んになった「食の安全」に対する消費者ニーズとも重なり、同社の地大豆豆腐は県内全域で人気となった。最近は、県内の学校給食に使う豆腐を県内産の大豆に切り替える橋渡しもしている。

このように山形の地大豆のパイオニアとも言える仁藤氏だが、紅大豆との「偶然の出会い」は衝撃だったと語る。

11年前、県主催の大豆料理コンテストでのこと。そこに川西町のあるおばあちゃんが赤い豆の煮物料理を出品。来場していた仁藤氏は釘付けになった。

「日本中で豆腐と大豆を見てきたが、赤い大豆は初めてでした。『おもしろい豆腐ができそうだ』とピンときた。かつては川西で多く見かけたが、いまはそのおばあちゃんが自分の畑だけでつくっているというのもポイントが高かったですね」

“そこでしかとれない”希少在来種はまず付加価値が高い。加えて、赤色は加工食品にした時に目立つ。効能や味も大事だが、特産品は見た目のインパクトが大事なことを、長年地豆腐を扱ってきたことで実感していた。

入り口から出口まで 強い絆で地産地商を

そこで仁藤氏は、まずコンクールで出会ったその女性から紅大豆を全て購入する約束をとりつけた。もっとも、3㎏程度しか採れないとのことだったので、その後、川西町役場に出向き「紅大豆は大きな産業になる。生産を増やせないか?」と提案したという。

これが大きな転機になった。

「川西町の産業振興課に佐々木雅彦さん(故人)という方がいて『川西の次の産業、名物としてぜひ育てたい』と全面的に手伝ってくれました」

まず佐々木氏は農家に紅大豆の生産拡大を図るため、助成金を用意。さらに農家をつなげる『川西町紅大豆生産研究会』を発足させ、業者とのマッチングまで率先して促しくれたのだ。

こうして農家は安心して紅大豆をつくれる状態に。結果3㎏から始まった紅大豆の出荷量は8年で50tまで増えた。

紅大豆を使った商品もあらゆるものに派生した。豆腐や納豆はもちろん、和菓子やアイスクリームなども地元の商店や企業が商品化している。

当然、仁藤商店でも紅大豆を使ったピンク色の豆腐「紅豆腐」、また半分を普通の大豆にして、紅白に仕上げた「しあわせ豆腐」を販売。価格は通常の地大豆よりも30%ほど高いものの、出せば売り切れる人気商品となった。

「大きな産業にまでつながったかというとまだまだ。でも、全国から『紅大豆が欲しい』との声を多々いただいています」

仁藤氏と川西町と紅大豆の成功例。幸運な出会いも大きいようだが「これは日本中のどの地域でも起こりうる」と言う。

「まず農産物の在来種は意外と身近に埋もれているもの。苦味や渋みを嫌ってきた結果、こうした農産物は激減しましたが、それは希少価値にもなっている。そして川西のおばあちゃんのような方はどこにでも必ずいますから」

また、「地域でビジネスを育てよう」と音頭をとることも不可欠だ。各々ではなしえない集合知が必ず得られるからだ。手間にも見えるが、仁藤氏は「キーマンが必ずいる」と言う。

「例えば紅大豆は町役場の佐々木さんとの出会いは大きかった。実際、どこの大学や役所にもやる気のある人が必ずいるもの。埋もれているんですよ」

人も商材も身近なところから丁寧に発掘する。それが、地産地商を成功させるカギなのかもしれない。

PART2
助成金・補助金を活用し町と住む人々を巻き込んだ
農業法人(有)わくわく手づくりファーム川北「地ビール」

自然を残しつつ 地域の雇用を生み出す

地産地商を成功させるポイントの一つは、地元をいかに上手に巻き込むかだろう。その好例が1998年に石川県川北町で設立された農業法人㈲わくわく手づくりファーム川北だ。事業はブルワリー&ガーデンの運営からスタートした。ガラス張りのブルワリーでは、地元の麦や米を原料として使った地ビールを生産。そこを取り囲むようにレストランが広がっている。開業後すぐに、外で飲食ができる40坪のガーデンハウスを増築。そして、いかにも地産地商らしいのが産直物産館だ。町が建設して同社に委託という形で運営している。取扱商品は町内の農家や飲食メーカーがつくった農産物や加工品などだ。

そして、今年の4月に発売した新製品が、六条麦を使用した「金沢百万石ビール」。すっきりした苦みが好評で、年間販売予定数量2万1000缶を3カ月で売り切る大ヒット商品になった。現在、徹夜の増産作業に追われているという。

同社を設立したのは、縫製工場を経営する兼業農家の入口博志氏。きっかけは、町内で「21世紀にこの町をどうするか」といったフォーラムが開催されたことであった。川北町は手取川に沿って東西に細長く伸びる人口6000人の町。複数の大企業が進出していて税収が豊富で、日本屈指の福祉が充実した町として有名だ。また町内には、1日2000人もの観光客が訪れる名湯・川北温泉があり、酒好きには「天狗舞」などの銘酒の縁の地として知られている。

しかし、町の将来には暗雲が立ち込めている。米づくりが次第に厳しくなっているからだ。現在、およそ3割の減反策がとられている。その間、補助金は出るが、永遠に続くはずはない。フォーラム出席者の典型的な意見は「米づくりは厳しいが豊かな自然は子孫に残したい」というものだった。「この時から、自然を残しながら地域の人が働ける方法はないかと模索するようになったわけです」と入口氏。

加入する地元の商工会では、新ビジネスを考えるための異業種交流グループがあった。そこの仲間とディスカッションを重ね、他県を視察するなどして何ができるか構想を固めていった。

町との連携と、 儲かるビジネスモデル

「大それたことですが、将来的に農業テーマパークをつくりたい、と」─宿泊施設に水田、パン工房、ハム工房などの体験施設があり、近隣から子どもたちがやってくるイメージだ。

もちろん、すぐにそんな大がかりな事業に取り組めるはずはない。まず手を付けたのは、減反中に生産する大豆と麦の活用法。その際、ひらめいたのがブルワリー&レストランだった。町には商店街はおろか、レストランもなく、地元の人や川北温泉への観光客の来店が期待できるだろう。店があれば大豆でつくった豆腐や菓子も売れそうだ。

しかしブルワリーやレストランの開設には、億単位の資金がいる。そこで入口氏は農業法人としてスタートすることにした。農業法人ならば、減反関連から発した事業に対してのさまざまな助成金を得られる。とはいえ、それでも資金は足りず、結局、入口家先祖伝来の田んぼを抵当に入れた。

「『頭がどうかした』と親戚一同に反対され大変でした(笑)」

ビール製造の免許をとるのも一苦労だった。94年にビールの最低製造数量基準が緩和されて全国に続々と地ビールメーカーが誕生したが、その多くは苦戦。所管する税務署も、「100万人の都市でも苦戦しているのだから、6000人の町で成功するはずがない」と、免許を発行してくれない。そこで売れる根拠を示すために「地ビール応援団」の制度をつくった。年会費1万5000円を支払えば年に4回ビールが届く。商工会、農協、役場などに協力を依頼し、1400口の申込を集め、それを裏付けに何とか免許がとれた。

紆余曲折を経てブルワリー&ガーデンがスタートしたのは2000年。活性化につながると、土地は町が貸してくれた。町と連携しやすく、かつ儲かるという観点でビジネスモデルを組み立てたことが奏功した。

倒産の危機を救った 北陸新幹線の開通決定

だが、一息ついたのも束の間。その後もさまざまな問題が押し寄せる。まず、原料。ビールには二条麦が適しているとされるが雪が降る川北で生産できるのは六条麦だった。降雪量は年々減っており、試験的に二条麦を作付けするとうまく育ったが、年によって生産量が変動するためコストは不安定になった。

また、ビールづくりに欠かせない麦芽を乾燥させる機械も予想以上に高額で、約1億円もした。これは結局、大手ビールメーカーの麦芽工場を借りることでクリアしたが、予想外の手間とコストが掛かった。

一方で、売れなければ話にならない。入口氏は、多くの地ビールが失敗した原因は特色が少ないからだと推測し、黒米入り、コシヒカリ入りといったユニークなビールを考案。評判は上々だったが、自信をつけた矢先、麦芽工場から、これ以上機械を貸せないとの連絡が入る。理由は小ロットで割が合わないから。

「潰れるかもしれないと思いましたが、北陸新幹線の開通決定という救い主が現れました」

それに伴い、石川県が地域振興の助成金の募集を開始。同社は、麦芽に含まれているギャバを使ったビール製造と麦芽を乾燥させる機械の開発の事業を提案、見事に採択された。

実際の機械を製作する資金は、農業高度化のための国の六次産業化認定事業に応募して確保。併せて六条麦でビールをつくる研究助成の獲得にも成功した。

こうしてギャバがたっぷり入り、六条麦を使った『金沢百万石ビール』が誕生したのである。目標は新幹線開通後に車内で販売すること。他地域からOEMでビールをつくりたいという依頼も入るようになった。

「来年は百万石ビールを3種類に増やす予定です。そして、次はいよいよ農業テーマパークの建設です。その前に田んぼを抵当から出したいけど(笑)」。入口氏の夢への挑戦は続く。

PART3
方向を示せば会社は上向く -プロが語る企業再生の極意-大

一過性の事象だけで会社は苦境に陥らない

リーマン・ショック、東日本大震災と、企業経営を揺さぶる出来事が続いた日本経済。苦境に陥っている会社には、これらを理由と考える経営者も少なくない。だが、(株)フィナンシャル・インスティチュートの川北英貴代表取締役は「必ずしもそうとは言えません」とその考えを否定する。その理由として、苦境に陥った会社はごく一部であり、それ以外の多くの会社はすでに回復を遂げていることを挙げる。

こうした会社の経営者にはいくつかの共通点がある。それは「売上をつくる」「経費を削減する」「戦略を立て、戦術に落とし込む」「見える化に取り組む」がきちんとできていないこと。本来、これらは日々の仕事の中でやって然るべきことである。それらを怠り、常に後手に回ってしまう。それが会社を苦境に陥らせる真の原因なのだ。

さらに最近増加傾向にあるのが、悪い方向に会社が進んでいるのにそれに気づいていないケース。その多くは、数字をきちんと読めない経営者に原因がある。「経営者ならば決算書が読めて当たり前」ということを前提に川北氏は、さらにその数字の見極めができていないことに注意を促す。

「例えば、人件費一つとっても、数字に見合った働きを社員がしているか否か。それを判断し、問題があれば手を打つのが経営者の役割です。表面だけではなく、数字の中身を深掘りすることが会社を苦境に陥らせないためには必要です」(川北氏)

企業再生に欠かせない経営者の覚悟と気迫

現在、同社に相談にくる会社は資金繰りに行き詰っている会社が大半だ。それらの会社をどうやって再生へと導くのか。

同社ではまず、返済額の見直しやリスケジュールなど金融機関との交渉を最優先で行う。それは、どんなに黒字化が可能でも、それまで会社を持ち堪えさせなければ元も子もないからだ。そのため、返済の負担を緩和し、気持ちに余裕を持たせた上で、事業の見直しに取り掛かっている。

事業の見直しでは、売上増と経費削減が必須となる。それに関して川北氏は「どちらかを優先するのではない」と言う。即効性のある経費削減を行いつつ、中長期的に売上を伸ばしていく。ほぼ同時に進めることが、会社を立て直す上で重要となる。

最後に川北氏は言う。

「企業再生に欠かせないものは、経営者の思いです。苦境に陥っている以上、経営者にはこれまでのやり方を否定する勇気、素直さが必要です」

経営者の再生に懸ける覚悟と気迫。その意思が強ければ強いほど、再生への道は広がる。